フィデリティ―史上最強の投信王国



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フィデリティ―史上最強の投信王国
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労作

投資信託がアメリカに誕生した頃に始まり、それが黎明期にどう発展したか、そしてフィデリティが投信を設計、販売してきているかがよくまとまった本。フィデリティの協力なしに外部情報だけでここまでの内容にまとまっているのはまさに労作。私にとって有益だったのは、アメリカにおける投信の歴史がよく理解できたこと。例えば、1920年代の大恐慌を含め、10?15年ごとの市場の停滞で投信がどう被害を受け、どう立ち直ったのか。どうオープンエンドの投信がクローズドな投信を駆逐したか。また、70年代に生まれたMMF、80年代のジャンク債、その後のデリバティブなどと投信の関係もよく分かる。予算不足はあるにせよ、不正に対するSECの対応がほとんど常に後手後手に回っていることも痛いほど分かる。利益相反問題がほどんど問題にならなかった時代から、無視できない時代への移行もよくまとまっている。

投信の歴史に加え、フィデリティという会社そのものについて詳しく知ったのも有益だった。テッド・ジョンソンがどういう経緯でフィデリティを安く手に入れたか、そしてその子のネッド・ジョンソンがフィデリティをどう拡大させ、どうオーナーとして君臨して経営しているかが(間接的にではあるにせよ)理解できる。また、違法ぎりぎりの行為を繰り返しながらリターンを少しでも上げようとするファンドマネージャーの姿が、実名で具体的に描かれているのは生々しい。

フィデリティの顧客としては、ノーロードの投信がどういう経緯で作られたか、ジャンク債のからくり、数々のマーケティング手法などが書かれているのも有益だった。例えば、産業別投信のセレクトシリーズについては、数多くの投信を揃えておけば、各産業にアップ、ダウンがあっても、常にいくつかの投信は投信ランキングの上位に食い込むことが可能で、それはセレクトシリーズのブランド力向上と顧客開拓に役立つ、というマーケティング判断で設計されたとのこと。それに乗せられてしまう顧客は投資でなく投機することになりえると、著者のちょっとした投資アドバイスがあったりするのも面白いところ。
フィデリティとは誠意ですか?

ライブドア問題が表沙汰になって久しいが、財務学者の間ではライブドアの本業が赤字で、合併買収を繰り返すことによって表面的な利益を操作しているのではないかということは永らく議論されてきたところである。
フィデリティは、十分な調査体制を整えて、情報を事前に掌握しているところに付加価値の源泉があると主張していた。しかし、フィデリティの投信がライブドア株を相当数保有していたため、誠意を売り物としている割には、投資のスタンスが投機的ではないかと思ったところである。
そういう中でこの書を読み返してみた。やはり、アメリカ流というか、日本的な価値観での誠意とは異なることが読み込めるのである。今後、フィデリティとつき合うのであれば、それなりに距離を置いて、1.5%を超える信託報酬を支払うに値する会社なのかは熟慮するべきだろう。
そういうことがよく分かる書である。
投信帝国の全貌

日本でも存在感を高めているフィデリティ。同社の歴史を影の部分も含めて詳細に描いている。同社は同族企業で株式を公開していないこともあり、内部を知ることは難しいが、本書によりかなり理解することができた。同社の歴史は米国投信の歴史でもあることから、米国の投信業界に関心を持つ人には必読と言える。本書によると同社は投信を金融商品としてではなく、コークやハンバーガーのように消費財として一般大衆に売りまくったとしている。日系投信会社に欠けているのはこの観点ではないかと思った。日本版401Kにより個人投資家層が拡大するに従いこの観点は一層重要になるだろう。



日本経済新聞社
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