本当に「中国は一つ」なのか―アメリカの中国・台湾政策の転換





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本当に「中国は一つ」なのか―アメリカの中国・台湾政策の転換
本当に「中国は一つ」なのか―アメリカの中国・台湾政策の転換

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「一つの中国」という"フィクション"は制度疲労を起こしている

米国の「一つの中国」という政策は、その歴史的・政治的・国際法上の背景を
理解しないと実に分かり辛い。分かり辛いだけならいいが、その分かり辛さは
中国の誤解を生み、彼らの「台湾は中国の主権下にある」という立場を米国は
"支持"していると解釈されかねないのではないか。それは台湾への武力侵攻を
引き出す要因になると、本書に登場する論者たちは危惧する。
本書を読めば分かることだが、米国の「一つの中国」は、台湾が中国の主権下に
あることを認めているわけではなく、中国がそのように言っていることを
"認識して"はいるが、あくまでも中国にふたつの政府の存在を認めないと
いう立場に留まるものなのだ。そして台湾の独立について「支持しない」が、
「反対」するのではなく、米国の国内法においては台湾を"国"とみなす。
読者も混乱するかも知れない。なにしろ米国の高官ですらよく分かって
いないために"失言"を公にしてしまい、中国あるいは台湾からの問い合わせが
殺到して、後に撤回と訂正のやむなきに至るという珍騒動を繰り返している
くらいなのだから、われわれがすぐに理解できなくても無理はないのだ。

こういった現状にタシク氏はじめの論者たちは強い違和感を感じている。
確かに「一つの中国」政策が有効だった時期はあった。しかし国際状況が変わった今、
本当にこのままでいいのか?今こそ新しい"プラン"を構築するべき時ではないのか?
これまで米国でもタブーと云えた「一つの中国」政策への本書の果敢なる
問題提起には、この問題に関わるあらゆる要素を網羅しつくしている。
これだけ踏み込んだ議論がおこなわれたことは大変な前進であると歓迎したい。
台湾問題を読み解く際の必読書の登場である。
「曖昧な」政策の全て

 アメリカの対中国・台湾政策は、ニクソン・キッシンジャーによる国交正常化以来、「曖昧な」ままだった。これによって、アメリカは台湾と正常な関係がないように見せかけ、中国との国交をどうにか保っているのだという(131頁)。例えば、アメリカ政府は「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるという中国の立場をアメリカは認識する」としているが、これは「中国の立場を承認した」だけであって、「アメリカ自身がその立場に同意したわけではない」としている(117頁)。さらに、アメリカは台湾独立については「支持はしない」が「反対もしない」(139頁)という立場をとっている。
 このように、非常に「曖昧な」外交姿勢は、過去の大統領及び政府高官に「失言」をもたらしてきた。そこで、本書に登場する識者たちは、台湾は国際法の観点から、確固たる民主主義国家であるという立場に立ち、論を進めていく。
 諸氏が「台湾独立支持」に与する根拠の一つは「民主国家が民主国家を攻撃することはない」というものである(187頁)。すなわち、サダム・フセイン政権をアメリカが崩壊させたように、武力を発動しても、アメリカ流民主主義を世界に波及させていくことが世界の安定と平和に繋がると諸氏は確信している。
 「民主主義国家が平和国家たりうるか」という疑問は既に故・高坂正尭氏が名著『国際政治』の終章でも論じているが、未だ議論の余地がある。
 とは言え、本書はアメリカの対中国・台湾政策の変遷・現状等を余すところなく論じている。我が国にとっても、アメリカの対中国・台湾政策は重要であるため、一読しておきたい書である。



草思社