タカラ トランスフォーマー
文 あしゅら男色 號
主役を喰らう成長株
今回紹介いたしますホットロッドは「トランスフォーマー マイクロン伝説」に登場するサイバトロンの若き戦士です。
もちろんTFシリーズの例に漏れず、主役はコンボイで、オモチャの展開はこれを中心としており、2079円(税込)クラスのホットロッドはスタンダードモデルでしかありませんでした。
同時に登場したサイバトロンの中では副官のラチェットが3129円(税込)クラスで、どう見てもタカラ的にはこちらが優遇されるべき存在だったこともあり、放映前にはホットロッドはTF者にはあまり注目されていなかったのです。人なつっこさそうな顔立ちや黄色を中心としたカラーリングが初代シリーズのミニボット「バンブル」を彷彿させたこともあったのかもしれません。
そのようなわけで、彼はよくある「最初からいるだけ」の雑魚ロボットで、話が進むに連れ、出番がなくなっていく奴位にしか思われていませんでした。
ところが、とんでもない勘違いだったのです!。むしろ、そうなったのはラチェット、いえ、コンボイの方でして、ホットロッドは事実上この「マイクロン伝説」の主役だったのでした!!。
番組を御覧になっていられなかった方にはにわかに信じがたいでしょうが、本当でして、見た人間なら誰もがそう思う筈です。
そう、この作品は新種のトランスフォーマー「マイクロン」を巡ってストーリーが進んでいたのですが、それは表向きの話でして、傍目から見る限り、ホットロッドという若者の成長を描いた物語でした。
ホットロッドは確かに最初は地球にやってきたコンボイのお付きの一人でしかなかったのですが(この時はサイバトロンは3体だけしかいませんでした)、若くて元気のいい彼はいつも前に飛び出していて、悪い意味でどっしり落ち着いていたコンボイなどより確実に目立っていたのです。
未熟故に失敗もするのですが、ついこの前まで敵だったデバスターをあっさり認め弟子入りするような素直さもあって、戦いや仲間との触れ合いを通じて確実に成長していきます。
そして、いつのまにやら新入りのステッパーに「兄貴」扱いされるようにまでなりましたが、彼の成長は止まらず、なんと終盤にはコンボイの代行で司令官にまでなってしまいます。
設定でも「彼は仲間を救うためなら、危機の中に飛び込んで行く度胸のある若い戦士だ。それは、彼が将来リーダーになれる器だということを示している」となっていましたが、本当にリーダーになってしまったのです。
先輩のサイバトロン達も誰も文句を言わず認めていまして、これは生まれ持った人徳の賜物でしょう。デバスターも「コンボイと同じ臭いのするお前との出会いがあったからわしはサイバトロンに入った!。未来を感じたからだ!」と言っていて、まだまだ荒削りで未熟ながらも成長の可能性を感じさせる上昇株のキャラだったのです。
さすがに「この馬鹿弟子がぁ!」と何たらガンダムみたいなセリフは出ませんでしたが、見事な凸凹師弟でした。
デストロンになってしまったかっての親友ランページとの戦いなどのエピソードも用意されていて、とにかく番組はホットロッドの視点で進んでいたので視聴者の誰もがホットロッドに共感し応援していたことでしょう。
今考えると、制作側にもここまでホットロッドを目立たせるつもりはなかったのではないでしょうか。意識してこうなったというより、想像を絶する番組作りの下手糞ぶりにより、こうなってしまったような気がしてなりません。
たしかに次々追加されるメインキャラの紹介の為に話数を使う宣伝番組故の制約は理解できるのですが、それでも初代シリーズがあれだけ多くのキャラを魅力的に描いていたことを考えると、あれから20年近くも経ったのにあなた方は何をしているのですかというレベルの話になります。しかも、それならそれで、せめて商品展開の軸となるコンボイを目立たせるとかでもすればいいのに、何故か目立つのはホットロッドばかりなのです。
たしかにコンボイがホットロッドに比べて動かしにくいキャラだったというのは理解できますし、考えてみれば別に誰が主役を張ろうと問題はないのですが、コンボイの目立たせ方がとにかくなっておらず、基本的にこいつが合体するタカラの新しいオモチャが出た時位しか目立つ時はなかったというのはどうかと思います。とてもメイン商品とは思えない扱いでした。比較的お手軽価格のホットロッドが求められるようになるということ自体は正しいことなのでしょうが・・・・。
結局、やっとメインキャラが出揃った後半になっても、このホットロッド偏重のストーリー展開は続き、結果として他のキャラの魅力はあまり描かれることもなく、「マイクロン伝説」関連の商品は年末には派手にワゴンセールを飾っていたのでした。
かといってホットロッドが飛ぶように売れたのかと言えば、どうもそうではないらしく、番組が終わってから半年ほどした頃、突然あちこちのお店で大量に叩き売られるようになったのです。
それも、それまでは売っていなかったのに突然棚に並んだので、この時期になって大量に入荷された=どこぞで倉庫整理でもあったようでして・・・・。
黄色いスポーツカーの男
さて、ホットロッドの商品ですが、結構いろいろと出ています。
タカラのオモチャはもちろん、トレーディング形式のフィギュアコレクション、アクションフィギュアのMEGASCF、カバヤの食玩と主要な所は全て押さえておりまして、マクドナルドのハッピーセットの景品にまでなっていました。
写真には入っていませんが、この他にオムロンのプライズ景品とかもありました。
さすが、最初期から登場していたキャラは扱いがいいと痛感する次第です。
その最初期からのキャラでも同じサイバトロンのラチェットとグラップはMEGASCFと食玩では出してもらえなかったのですから、やはりタカラ的にもホットロッドの扱いは特別だったようですね。
尚、グラップはハッピーセットになっていまして、ひたすらラチェットの扱いだけが・・・。
MEGASCFはデストロンはメガトロン、アイアンハイド、スタースクリームと3種類出ていましたが、サイバトロン側も同じく3種類ながら、内2つはノーマルモードとスーパーモードのコンボイでして、コンボイ以外はホットロッドだけです。
食玩の「BIGトランスフォーマー」は全4種でして、コンボイがノーマルモードとスーパーモードの2種類とメガトロン、そしてこの2大巨頭に混じってこれまたホットロッドというラインナップだったのです。
これはもうエコ贔屓の域のような・・・・。
メインとなるタカラのTOYですが、これは結構な秀作と申しますか、傑作と言ってもよい素晴らしい物です。
アウディ風のビーグルモードの美しさも見事ですし、変形システムも簡単で、これなら説明書など必要ありません。子供でもガチャガチャ動かしている内にいつのまにか、ロボットの形になっていることでしょう。
後に本で読んだのですが、やはりこれは「ビーストウォーズ」「カーロボット」の時の複雑化しすぎた変形システムの反省が多分にあり、説明書と首っ引きで、邪魔になるこのパーツをどかして、その間にここを動かして、また戻して・・・なんてミリ単位の攻防を強いられる立体パズルではいけないとタカラの人も思い直したからだそうです。
それでいて、プロポーションや変形の面白さは以前と同じ、あるいはそれ以上のレベルを求められているのですから、大変だったことでしょうね。
そして、このホットロッドの特徴は「遊んで楽しい」ということでして、この価格の品でありながら、楽しいアクションが満載です。
ビーグルモードでボンネットにハンドガンにもなっているエンジンパーツをセットしますと前面からチェーンソーカッターが飛び出しますし、この状態で付属のマイクロン「ジョルト」をセットすることもできます。
ジョルトを車体後方にセットして空を飛ぶという風にも使えまして、これはアニメでも何度も見られた形態でした。なんともオモチャ的ではありますが、ビーグルモードでもマイクロンをうまく使っていた珍しい例だったと思います。
この接続部にはもちろん他のマイクロンをセットすることも可能で、物によってはちょっとした武器みたいでいい感じだったことを付記しておきます。
また、初期オープニングではスターセイバーをかっこよく振り回していた姿が印象的でしたが、彼が番組内でこれを与えられていたのには理由がありました。
TOY版のスターセイバーはとてつもなく格好悪いので、
カバヤの食玩を使ってみましたが、これもイマイチですね。
刀身を塗装でもするべきでしょうか?
なんと、タカラのTOYでは右手に発光装置が仕込まれていて、スターセイバーを持ったときにこれを光らせることができるのです(ドアミラーがスイッチになっています)。
このギミックは他にはコンボイスーパーモード位にしか見られず、この価格のホットロッドには贅沢すぎる装備だったような気も・・・。実際にアメリカ版ではこのギミックはオミットされていました。
尚「マイクロン伝説」のTOYにはロボット単体の発売形態の他にマイクロンとのセットになっていた物もございまして、ホットロッドの場合はスターセイバーに合体するエアディフェンスマイクロンとのセットだったことも付記しておきます。
そして一番の売りはロボットモードでジョルトを背中にセットして動かすと作動するジャイアントバズーカです。「マイクロン伝説」関連の商品はどれもこの「エボリューション」を売りにしていまして、全然おもしろくもない物が多かったのも事実ですが、ホットロッドの場合は見事でした。
これは意外に凝った作りでして、まず腰にセットしたジョルトを上にスライドさせるとスプリングアクションでビーグルモードの時の前輪部が上に飛び出します。
そしてもう一度ジョルトを上に動かすとクリルとバズーカの砲身が回転してミサイルを自動発射するのです(回転するのと同時に発射するので、初めて見た時は絶対にビックリすると思います)。アニメではこの時、頭部のバイザーが下りているのですが、ちゃんとここも可動するようになっています。さすがにここは手動でしたが。
尚、「BIGトランスフォーマー」も食玩の分際でこの形態が再現可能です。もちろん完全に手動でしたが、バイザーまで動くようになっている凝り様でした。
そしてロボットのオモチャでは重要な関節の可動度もなかなかの物です。構造上、肩が縦方向に回転できないというハンデを背負っているのに、横方向への動きや肘の回転でそれを感じさせない所は見事だと思います。
これで胴と手首も動いていれば文句はなかったのですが、コストや内蔵ギミックの問題で難しかったのでしょうね。
ただ、これもギミックとの両立を考えると、どうしようもない部分なのでしょうが、ちょっとアニメとプロポーションが違うといいますか、どう見ても頭が体に埋もれた感じなのが残念です。
正確に申しますと、問題があるのは頭部の位置よりも肩および背中でして、ここが下にスライドするようにでもなっていれば、かなり印象は改善されていたのですが・・・。やはり、ホットロッドの弱点は肩でしたか!。
まあ、このような難点もありますが、総じて言えば、変形システムも秀逸ですし、プレイバリューも高く、価格的にも満足のいくレベルで、オモチャとしては最高クラスに素晴らしい物だったと思います。安く手に入る今なら「買い」と申し上げておきましょう。
アクションフィギュアという位置付けのMEGASCFはこのオモチャ版の弱点をかなり克服している筈なのですが、実際には可動もプロポーション面もマダマダです。
彩色もかなり低レベルなところにいいかげんなスミ入れを行っているので見苦しいことこの上なく、こちらの面ではオモチャ版に負けている気すらします。「フル可動!フル彩色!」が売りのシリーズなのですが、一度目にしていただければ、このMEGASCFが派手に売れ残っている理由がわかっていただけることでしょう。
定価は1780円(税抜)ですが、ダイオキシンHIDE號など100円(税込)で売っていたのを見たそうです。こちらも価格的に「買い」・・・・なのでしょうか?。
左が問題のMEGASCF(1780円)で、右はカバヤの食玩(300円)ですが、
正直、1000円以上の価格差分の価値は感じられません。
戦え!ホットロッド!トランスフォーム!
「マイクロン伝説」は新世代のTFということで、「仕切り直し」の一面があり、基本的に登場するキャラの名前は過去の作品に登場した物を使っていました。
ホットロッドはあのサイバトロン2代目総司令官ロディマスコンボイの前身「ホットロディマス」の英語名「HOT ROD」から名付けられていて、この面でも将来のリーダーたる素質を持っていたのです。
番組後半ではマイクロンの力によって「ホットロッドS(スーパーモード)」にバージョンアップしましたが、これは簡単に申しますと、姿は以前と同じでカラーリングのみ、赤い部分と黄色い部分が反対になっていまして、ビーグルモードはいよいよホットロディマス風の姿になりました。
こうなりますと、次の作品辺りでは本当に司令官になって「ホットコンボイ」にでもなるのでは?とまで思ってしまうのですが、その次回作「トランスフォーマー スーパーリンク」では全然そんなことはありませんでした。
と、申しますか、全然目立たなくなってしまったのです。
ホットロッドはアメリカ版では「HOT SHOT」の名前だったのですが、劇中では10年後の世界の「スーパーリンク」ではその名前になり、姿もかなり変わりました。
それはいいのですが、たかが10年でよくもこんなにと思うほどに沈着冷静な性格になっています。おかげで「マイクロン伝説」の時の親しみやすさは大きく失われ、声も変わっているので、かなり別人感が強いです。
「スーパーリンク」ではホットショットだけでなく「マイクロン伝説」からの引継ぎで登場したキャラは大概姿と一緒に声優が変更になっていたのですが、個人的にはこれはちょっと・・・・。
タカラの説明によりますと、「スーパーリンク」ではロボの描写がオールCGで感情が伝わりにくいので声優はベテランを使ったというのですが、前作のファンの気持ちはどうなるんだという以前に「マイクロン伝説」の声優さん達に対して失礼極まりない話です。
タカラはよくこんな無礼をやらかす会社でして、スポンサードしている作品内では途中で声優が変更になるようなことも珍しくないのですが、困った物ですね。そんなことだからアニメ界でいつまでたっても(以降、検閲により削除)
結果として前作そのままの姿と声(正確にはオモチャを出す都合でカラーチェンジされていましたが)で「スーパーリンク」に登場していたのはアイアンハイド、サンドストーム、ショックウェーブのデストロン残留組だけでして、しかもこの連中、すぐに生まれ変わって別の姿になってしまい、これまた性格も変わって別人になってしまいました。
おまけにこの番組でも新ロボへの移行は行われ、ホットショットは「ホットショットF(ファイヤー)」に生まれ変わります。
これまた色を変えただけで(さすがに気まずいと思ったのか、限定カラーのエネルゴンウェポンのオマケが付きますが)、オモチャ会社のやらかす事はひたすら見苦しい次第です。
余談ですが、ホットロッドがホットロッドSになった時は単なる成型色変更と思いきや、表情が多少凛々しい物に変更されていたのですが、バイザーが動かないという改悪が加えられていました。
たしかにこの姿になってからエボリューションしてジャイアントバズーカを撃っていたことはなかったですけどね・・・・。
そしてホットショットは番組内でかつてセイバートロン星を旅立った伝説の戦士ロディマスコンボイを尊敬して憧れていると言っていまして、彼がロディマスコンボイのような存在になる可能性も消えてしまいました。
しかもそのロディマスコンボイそのものが登場してしまい、ホットショットは彼とスーパーリンクする時は下になって喜んでいる始末です。
結局、ホットショットは出世街道が行き止まりっぽくなっただけではなく、出番自体も少なくなり、「マイクロン伝説」の時のような彼のポジションは人間キャラのキッカーとそのパートナーのロードバスターに奪われてしまったのでした。世の中、油断も隙もありませんね。
そういえば「マイクロン伝説」でホットロッドがリーダーになったのはコンボイがデストロンの破壊兵器から身を呈して地球を守り、死んでしまったからだったのですが、さすがは主役の貫禄と申しますか、すぐに復活しまして、ホットロッドが代行だった期間はまさに三日天下でした。
考えてみれば、この番組の予告の最後はいつも「戦え!コンボイ!トランスフォーム!」の言葉で締めくくられていたのですが、コンボイがいなくなっていた時は「戦え!ホットロッド!トランスフォーム!」となると思いきや、「戦え!サイバトロン!トランスフォーム!」で、まだホットロッドが名実共に主役となれる日は来ていなかったのです。
結局ホットロッドは10年経っても司令官にはなっていないというわけですが、人間とは比べ物にならない生を送るトランスフォーマーですから、10年なんてほんのわずかのことだったのかもしれません。次の番組辺りでは期待したいですねと、思っていましたら、今度は世界観がリセットされてしまい、まったく出番ナシでしたが・・・。
ただ、数年が経った後にホットロッドは再び、私達の前に姿を現しました。実写映画のTFが当たったのでタカラはアメリカで「トランスフォーマークラシックス」として、昔のTFを今日の技術でリニューアルして売り出し始め、これが「変形!ヘンケイ!トランスフォーマー」の商品名で日本でも発売されるようになったのです。
これは基本的にG1世代のもうどうしようもない姿の物ばかりが選ばれていたのですが、2009年春に発売された新作にホットロッドの姿もあったのでした。21世紀に入ってからの作品からの抜擢はこれが初めてでビックリさせられたものです。それにホットロッドは敢えて作り直す必要があるほどのひどい物でもなかったですしね。
しかし、発売された物を見て理解できました。ロボット時のプロポーションが数段向上していたのです。「マイクロン伝説」の頃の私の「標準」はまだまだ甘かったのでした。と、いうより、わずか数年でここまでの進化を遂げたタカラに素直に讃辞を送るべきでしょう。
ただ、この新ホットロッド、ちゃんとジョルトは付いてはいるのですが、エボリューションはできません。ギミックよりプロポーションを重視する方向に走ったのかエボリューションの機構がオミットされてしまったのでした。
遊ぶ時の楽しさがコンセプトで開発されたホットロッドがこんなことになったのは複雑な気分ではありますが、こちらの方向性も確かに求められていた筈の物なので、悪いことではないと思います。番組内では目立ちまくっていたホットロッドのことですから、いつの日か両方の要素を充分に満たした超絶モデルが出る日が来るかもしれませんね。